ずっと、聞きたかった

母は早くに亡くなり、
継母とは若いころあまりそりが合わず、
近隣一と言われた美人の姉を持ち、
家のつり合いで嫁に行った先では、夫、舅とは折り合いが良く幸せだったけれど、小姑に嫌われ、嫁して3年たっても子供が出来ず里帰りした隙に、小姑が手を回し離縁。
1年ほど実家で☓いちくらし。
再婚した相手は初婚。
こちらは再婚なので、あまり裕福でない農家。
しかも、相手は好きだった人とひき剥がされて。
おまけに、その家の舅・姑以外全員敵対的。
初めてできた子供を、夫は自分の子ではないと、いじめ抜いたらしい。
それはひどいものだったとか。
ゆえに、この子供は長じて自分の子供にも愛情を注ぐことが出来なかった。
自分の子供から、絶縁宣言されたと聞く。
夫は、近くの別の人に嫁いだ引き裂かれた恋人とずっと不倫をしていたとか。
近隣で夫婦で参加するイベントに妻は参加したことが一度もない。
夫は参加しても。
妻は、暴力も振るわれていたらしい。
自分の実家の兄弟親戚しか頼るものがない。
3人子供がいるが、どの子も父の親戚が嫌いだそうだ。
母が、自分たちが受けてきた苦痛がそれほどひどいものだったのだろう。
長男は、家にい付かなかったが、父の葬儀の時喪主が不在ではと、警察の手を借りて探したそうだ。
喪主として、席に座った彼は、父に生き写しだった。
幼かった彼を、自分の子ではないといじめていたことをまわり中が知っていたので、知っている人は皆彼を不憫に思った。
しばらく、母と暮らしていたが何時の間にかいなくなっていた。
゛探したら、殺す゛と母に言い放ち出て行ったそうだ。
ゆえに、あなたの葬儀に彼はいませんでした。

母は彼からの暴力にとても怯えていた。
近所の人が止めに入るくらい、ひどかったと聞く。
脳梗塞で倒れた時、誰かがそばにいれば助かったと、助かる確率は高かったと、皆が言う。

幸せでしたか？
幸せな時がありましたか？

そんな事情を全く知らなかった私は、あなたの笑顔が好きでした。
時々、食べきれないくらい大量の漬物とか野菜とか貰って、少々辟易したこともありました。
持ってくる時決まって
゛家のお父さんには内緒にしてね”
と言われました。
何故そんなことを言うのかよくわかりませんでしたけれど。
私の、父や母は知っていたのでしょう。

小説は好きです。
けれど、現実にこんな凄絶な人生って・・・
けれど、あの人は笑顔が可愛い人でした。
彼女の夫だった人もとてもハンサムな人でした。

幸せでしたか。
幸せだった時はありましたか？

絶対彼女に聞いてはいけない質問でしょう。
でも、なぜか切なくて問いかけてしまいたくなってしまうのです。
この質問が、彼女にとってどんなに残酷な言葉か頭では解っているのに。
あまりに、理不尽では無いですか。
無邪気だった自分にも腹が立ちました。

けれど、思い出すのはかわいい笑顔。
私が、あなたの人生のほんの少しを知ったのはあなたの葬儀の時でした。
もっと、話をすればよかった。
あなたの笑顔を思い出すたびに

幸せでしたか？
今幸せですか？

答えはもらえないけれど。
そして、ごめんなさい。
ちょっとドジで、ぽやぽやっとしたかわいい人としか思っていなかった。